杉ウイメンズクリニック

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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック | 院長コラム

抗PE抗体の総説論文を国際医学雑誌に発表しました。(8/27に一部赤で加筆しました。)

2013/07/15

 先日、某不妊研究会で不妊専門医を相手に不育症の特別講演をしました。講演のあとの懇親会で、ある不妊専門医が歩み寄って来られ、「実は、私は不育症診療に関してはかなりいかがわしいと思っており、今日は厳しく質問して壇上で立ち往生させてやろうと手ぐすねを引いて待っていたのですが、講演を聞いて全て納得してしまいました。」と白状してくれました。これが、多くの婦人科医の実情であると思います。私はこの出来事で、不育症の勉強不足による間違った先入観を持っている婦人科医が存在すると言う事実を改めて思い知ったのでした。私の講演を聞きに来たり、論文を読んでくれれば多くの誤解は解消するのですが、学会に来ない、論文を読まない医師も多く存在します。エビデンスの乏しい不育症診療をしている一部の婦人科医に対する不信感もあるのかも知れません。でも、それは不妊治療でも同様です。それでも、私が出来る事は、粛々と研究し、論文を書く事と、学会で発表する事を地道にやる事に尽きます。
 今回、久しぶりに英語の総説論文を国際医学雑誌に発表しました。英語の論文というのは、数人のレフリーが審査をし、合格した論文しか載る事が出来ません。世界中の研究者が審査するので、コネなどは通じません。私も多くの論文を発表して来ましたし、また、レフリーとしていろんな国の投稿論文を審査する立場でもあります。その様な医学論文の中でも別格であるのは、総説 (review)論文と言うものです。総説論文は、医学雑誌の編集者がその分野のエキスパートに依頼して書いてもらうもので、依頼された研究者としては名誉な事です。今回私は、キニノーゲンを認識する抗PE (phosphatidylethanolamine) 抗体の発見者として、抗PE抗体と抗第XII因子抗体に関して、総説論文を書かさせていただきました。不育症診療において、抗PE抗体と第XII因子の検査、診断、治療、セカンドオピニオンに関わる婦人科医には是非読んで頂きたいと思います。

 www.sugi-wc.jp/column/webdir/102.html


参考までに、昨年国際医学雑誌に発表された抗PE抗体の総説論文も紹介します。

 www.sugi-wc.jp/column/webdir/104.html


この論文は、ブラジルとイギリスの研究者の共著で、参考文献を見ると(下にリンクを貼ります)、私の論文が11本引用されている事がお分かりかと思います。国際的には、抗
PE抗体の病原性に疑問を唱える論文は殆ど無い様です。一つだけ、抗PE抗体陽性で治療しなくても大丈夫だったとう論文がありますが(参考文献の38)、これは名古屋市立大の論文で、私も共同研究者ですが、この論文は、抗PE抗体の中でも病原性の無いものもあり、それは治療が不要であるので、抗PE抗体が陽性と言うだけでそれが原因と決めつけ、治療するのは如何なものかという内容です。この件は、私が既に抗PE抗体の約60%にしか病原性が無い事は報告済みなので、抗PE抗体の測定意義を否定するものではありません。抗PE抗体と抗第XII因子抗体を併せ持つ場合が、要注意です。

www.sugi-wc.jp/column/webdir/105.html

著作権がありますので、いずれの論文も、一部分のみしかお見せ出来ないので、ご了承下さい。

昨今、産婦人科医は多忙で、論文を読む暇も無い有様です。その中で、英語の論文を書く人、英語の論文を読む人、日本語の論文しか読まない人、論文を読まない人の知識の格差は、広がるばかりです。昔は、医者の目標は研究して医学博士を取る事でしたが、今は臨床医として有利な専門医の資格を取る事に変化しています。しかし、不育症の様な新しい分野を発展させるためには、医学博士の研究が必須です。臨床医に必要な事は、エビデンスに基づく医療を行なう事ですが、研究に必要な事は、新しいエビデンスを作る事ですから。

 

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