杉ウイメンズクリニック

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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック | 院長コラム

甲状腺検査において、TSHのみ高値の場合、治療はするべきか。

2017/12/03

最近、不妊クリニックにおいて、甲状腺検査でTSH2.5以上の場合は、積極的に甲状腺専門医を紹介し、チラージンの服用を勧めています。その根拠は、最近海外において、TSH2.5以上あり、なおかつ甲状腺自己抗体が陽性の場合は、チラージンの介入で妊娠転機を改善させる事がランダム化比較試験で示され、この結果をもとに、妊娠希望する場合はTSH2.5以下にするよう、積極的な治療するべきであると、多くの海外のガイドラインが推奨しているからです。一方、自己抗体が陰性の場合は、まだ治療するべきかは、意見が分かれています。日本では、TSH2.5以上の人は約20%もいて、この人達全員に甲状腺内科受診させ、チラージンを服用させるのは、あまりにも過剰な診療の様な気がします。ちなみに、日本人は海藻を良く食べるので、ヨウ素摂取量は多い国民です。以前、オーストラリアにおいて、昆布だしの食品で健康被害が出た事があります。オーストラリアは、ヨウ素摂取が不足している地域で、日本人には全く問題ない量のヨウ素を摂取しても、甲状腺に異常が出てしまう様です。TSH2.5以下が望ましいという研究は、海外の研究であり、それをそのまま日本人に当てはめて良いのか、疑問があります。ちなみに、日本の母性内科医の意見は、チラージンの様な安価で害の無い薬で済むのだから、疑わしかったら治療しておいた方が良いのではと言う事でした。それならそれでも良いですが、TSH2.5以上だからと言って、それが過去の流産や着床障害の原因であると決めつけると、他の本当の原因を見逃し、チラージンを飲んだのに流産が止まらないという状況が生まれますので、TSH高値に関しては、不育症の原因としてあまり神経質に考えなくても良いのかもしれません。もちろん、TSH2.5以上で、甲状腺自己抗体陽性の人は、チラージンを飲むべきですし、他の抗リン脂質抗体などの流産の原因になり得る自己抗体を併せ持つ可能性もあるので、その検査もするべきですが、甲状腺自己抗体陰性の人は、チラージンはあくまでも念のためのサプリ的扱いで良いのかもしれません。今後、AMED不育症研究班で、日本人のTSHの扱いについて、研究する予定です。
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