杉ウイメンズクリニック

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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック | 院長コラム

プロテインS欠乏症に関しての警告。

2011/06/30

最近、プロテインS欠乏症の治療に関しての質問がありますので、簡単にまとめたいと思います。
プロテインS欠乏症は、欧米人に較べて日本人に多く見られます。血栓症のリスクファクターであり、子宮の血流を悪くするために、妊娠初期流産、子宮内胎児死亡、妊娠中の血栓症の原因になります。
厚労省不育症研究班の調査でも、プロテインS欠乏症の無治療での妊娠成功率はわずか15%しかありませんでした。研究班の報告の表6をご覧下さい。この報告では、プロテインS欠乏とは60%未満と定義しています。
fuiku.jp/report/data_2022/2022_01.pdf
しかし、きちんとアスピリンやヘパリンなどの抗凝固療法を行えば大丈夫なので、ご安心下さい。ただし、治療は妊娠後期まで、必要があれば分娩間際まで必要な事もあります。
最近、我々は、プロテインS抗原量が52%だった方に、アスピリン、ヘパリン療法を行い、無事分娩に至ったのですが、分娩後に血栓を起こした方がいましたので、学会で報告し、注意を促しました。演題番号46をご覧下さい。プロテインSの1パーセンタイル値は約55%ですので、52%はしっかり欠乏と言えます。
jsog-k.jp/journal/pdf/048020164.pdf
この方は、不幸にも分娩後、自宅でインフルエンザにかかり、寝たきり、脱水と言う、血液がどろどろになる状況があったので発症してしまいました。普通はこんな悪条件はあり得ないのですが、産褥期は母乳に水分が取られるので、脱水になり易く、それに加えてインフルエンザなどの状況が重なって発症したと思われます。
プロテインS欠乏の人は、妊娠初期の悪阻による脱水、妊娠中の切迫流産、切迫早産による長期入院、ベッド上安静、帝王切開による分娩などの状況が血栓症のリスクファクターです。
あまり、脅かすのは如何なものかと思い、今まで本人の血栓症に関するリスクは積極的に公に書きませんでしたが、プロテインS欠乏不育症患者の治療を軽視している医師も多い事と、エコノミークラス症候群同様、本人が気を付ければ防げる事も多いので、今回ここで注意を喚起したいと思います。
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