杉ウイメンズクリニック

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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック | 院長コラム

「ループスアンチコアグラントが1.0未満の場合は、検査の信頼性がない」と言う過激な演題名で12月の学会で発表しようと思い、抄録を投稿しました。抄録を公開します

2011/09/24

目的:抗リン脂質抗体症候群の診断に非常に重要な要素は、測定法である。しかしながら、診療の現場では、医師は検査項目をクリックするのみで、採血から測定までパラメディカルに任せっきりの事が殆どである。抗リン脂質抗体の中でも特にループスアンチコアグラント(LA)は、国際血栓止血学会学術標準化委員会(ISTH-SSC)のガイドライン(J Thromb Haemost 2009; 7: 1737-40)に従い、採血直後からの処理が非常に重要である。例えば、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)は、理論的には1.0未満になることはなく、もしその様な検査結果がでた場合は、検査の信頼性は無い。にも関わらず、dRVVTが1.0未満という前医の検査結果を持参して来院する患者が多い。今回、我々は、採血後の処理が検査データに与える影響を検討した。

方法:dRVVTの採血後の処理と結果に与える影響を調べるため、SRL社の協力のもと、患者から採血直後に当院研究所においてISTH-SSCのガイドラインに準拠して遠心分離などの処理をした群と、採血後そのまま室温放置し、夕方SRL社に提出した群の検査結果を比較した。

結果:30症例のdRVVTを、採血後処理群と、非処理群で比較すると、処理群では1.18±0.05、非処理群では1.13±0.04で、全ての症例で非処理群が低値であり(p<0.001)、平均すると0.05低かった。しかしながら、1.0未満の症例は無かった。一部、血液を室温over nightで放置し、検査に提出してみたが、1.0を切る事は無かった。

考察:LAはISTH-SSCのガイドラインに基づいて測定する事が重要であり、採血後の処理を怠ると、その検査結果は全く信用出来ない。特に、dRVVTで1.0未満の結果がでた場合は、採血直後の遠心分離をしなかっただけでは説明がつかず、採血から遠心分離、血漿凍結保存、解凍、検査手技の全てを見直す必要がある。当院では、3000人以上の検査を提出しているが、dRVVTが1.0を切った事は、1回も無い。

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