杉ウイメンズクリニック

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低用量アスピリン療法を否定する産婦人科医とは?
2016/03/13(日)

最近に限らず、昔からなのですが、当院で低用量アスピリン療法の方針とした方で、不妊クリニックや分娩病院の産婦人科医からアスピリン療法を否定される方がたまにいます。どちらも、アスピリンに対する誤った知識の為と思います。

不妊のクリニックでアスピリンを反対される理由で、最近よく聞くのは、アスピリンを飲むと着床しなくなるという誤解です。この件は、2015.2.14.に書いた「低用量アスピリン療法の副作用で不妊になるか」に詳しく解説しましたので、ご覧ください。

  www.sugi-wc.jp/news_disp.cgi

また、低用量アスピリン療法の方針の方で、妊娠初期に出血、絨毛膜下血腫が見られることが良くあります。これは、「不育症学級改訂版」に詳しく説明しましたが、当院でアスピリンの方針にした方は、血液凝固系検査で何らかの異常があり、妊娠すると胎盤の血管に血栓が出来、流産するため、血栓予防でアスピリンの方針にしています。胎盤の血管に血栓ができて詰まると、血管が破綻し、出血します。従って、血栓傾向の方は、出血、絨毛膜下血腫が出来やすい訳で、その様な人にアスピリン飲んで貰っているので、アスピリン療法の方が妊娠すると出血し易いのは当然です。しかし、一般婦人科医は、アスピリンの副作用で出血したと思い、アスピリンを中止し、止血剤を処方します。でも、これでは逆効果な事は、少し考えれば誰でも分かります。因果関係が逆です。アスピリンの副作用で出血する事はありませんし、少々出血したとしても、アスピリンの副作用で流産の原因になる様な大出血は起こらないと、多くの世界中の医学論文に書かれています。

分娩病院の産科医がアスピリン療法に反対する理由は、妊娠中の大出血に対する恐れと、胎児の心臓に悪影響があるかも知れないという恐れです。アスピリンを飲んでいると、胎盤早期剥離を起こして大出血して危険であると言うのが良くある産科医の意見ですが、幸い、この可能性は否定されています。過去の大規模な研究で、低用量アスピリンの副作用で胎盤早期剥離が起きたという報告はありません。また、陣痛発来までアスピリンを飲んでいても、分娩時の出血は若干増加したが、輸血に至る様な大出血は無かったと報告されています。さらに、胎児の心臓に対する悪影響も、世界的に否定されています。

アスピリンに関して、不育症専門医の意見と、不妊、周産期専門医の意見が異なると、困るのは皆さんです。しかしながら、この件に関しては、どちらの言い分にも一理あるという訳ではありません。我々不育症専門医は、世界中の研究論文をもとに、安全性、有用性に関してエビデンスのある治療方針を出しているので、それを個人的な意見で反対されても困ります。反対するのであれば、根拠となる論文を提示して頂きたいと私は思います。何よりも、アスピリンを飲まないと流産してしまうから飲んでいる訳なのに、流産予防の代替案の提示無しに、出血が怖いから中止しろと言われても、困ります。結局、アスピリン反対派の婦人科医は、アスピリンなんか不要、不育症なんか存在しないという、不育症否定派なのでしょう。不育症に詳しい不妊、周産期専門医は、アスピリン療法を否定しません。最近は、不育症の認知度も上がり、この様な事も減りつつあります。逆に、着床率を上げるために、全員に、移植の日からアスピリン、ヘパリンを使用する極端な不妊専門医もいますが、これも、全く効果がない事は、最近の論文で報告されています。エビデンスに基づいた医療を提供する事が大切であると思います。

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