杉ウイメンズクリニック

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日本生殖医学会参加報告
2016/11/06(日)
11月3日、4日は、休診して日本生殖医学会に参加してきました。皆様にはご迷惑をおかけしました。大変盛況で、2500人が参加したそうです。日本の産婦人科医は約1万人なので、どれだけ凄いか、お分かりかと思います。その巨大な学会で、今年は不育症がテーマのシンポジウムが開かれ、東大の産婦人科主任教授の藤井教授と私の二人で座長を務めました。幾つか、面白い知見がありましたので、書き留めます。
日本大学の早川教授は、私の古い研究仲間ですが、熱帯医学も専門で、東南アジアで不育症が少ない事、そこには寄生虫が関係しているかもしれないなど、興味深い講演でした。受精卵が母体から拒絶されないよう、いかに免疫系が胎児を守っているのか、研究が進んできており、以前はTh1/Th2バランスのみで解明しようとした時代がありましたが、今はそれも否定され、制御性T細胞が注目されています。
東大の発表は、ストレスと流産に関するもので、動物実験でネズミにストレスをかけると流産し易い事が報告されました。人間でも、不育症検査で異常なく、次回妊娠時に無治療で臨んだ場合、ストレスが高い人の方が流産率が高かったそうですが、不育症検査で異常が見つかり、次回妊娠時に何らかの治療をした場合は、ストレスが高い人も低い人も、妊娠成功率に差は無かったそうです。と言う事は、治療している人に関しては、ストレスが高いと流産してしまうのでは無いかという心配は、無用である様です。
神戸大は、抗リン脂質抗体症候群にアスピリン、ヘパリンを併用すると、非常に成功率が高い事が報告され、アスピリン、ヘパリンで治療しても出産でき無い人に関する治療として、ガンマグロブリン療法の報告がありました。また、プロテインS欠乏に関しては、プロテインS活性は妊娠すると誰でも普段の半分以下になるので、妊娠してからプロテインSを測定し、それを非妊娠時の正常値で判断する事は不適切である事が報告されました。例えば、プロテインS活性の正常値は、非妊娠時に60%以上の場合、妊娠初期は30%以上を正常にするなど、妊娠時の正常値を作るべきであると言う事でした。
富山大は、制御性T細胞 (Treg)が如何に母体が受精卵を拒絶しないために子宮内膜局所で頑張っているかという発表でした。Tregの誘導には、精漿が必要との事でした。精漿は、精液の液体部分です。従って、体外受精時も、精液との接触が必要なのかもしれません。ところで、Tregが活性化するというデータは、マウスの子宮内膜の局所のデータであり、着床部位とそうでない部位でも差があるそうです。従って、末梢血で測定しても、あまり良いデータは得られないそうで、まして、末梢血のTh1/Th2を測定して診断し、治療方針を出すのは、意味が無いそうです。
あまりにもザックリしたまとめで、若干私の中で勝手に解釈した部分もあると思いますが、私が座長として、興味深いと思った点を書いてみました。
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