杉ウイメンズクリニック

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4月から開始した新しい検査、抗EGF抗体の解析
2020/05/17(日)

 4月から開始した新しい検査、抗EGF抗体の検査結果を解析しました。

全初診患者さん中、22.3%が陽性でした。全初診患者さんなので、不育症、着床障害はもちろん、不妊治療に進む前に念のため検査希望の方など、内訳はさまざまです。ちなみに、正常女性65人中、陽性者は0人でした。当院の従来の検査が全て陰性で、抗EGF抗体のみが陽性であった人は、3.8%でした。今までなら、「異常無し」か、「原因不明」と診断した人の22.2%に、新しいリスクファクターが見つかった事になります。

 ちなみに、昨年、検査開発中に測定した223人の不育症または着床障害患者に限定して計算すると、陽性率は32.7%でかなり高率でした。内、不育症患者146人中、陽性率28.8%、着床障害患者109人中では陽性率37.6%で、特に着床障害患者群で高率でした。正常女性65人中、陽性者は0人なので、決して基準値が甘いわけではありません。

 不育症患者で抗EGF抗体陽性者は、抗第XII因子抗体や抗プロテインS抗体も陽性の事が多く、従来の検査のみでも診断できる可能性が高いのですが、着床障害患者で抗EGF抗体陽性者は、従来検査では異常が無い事が多く、原因不明着床障害患者の診断に有益と思われます。

 ところで、言うまでもなく、抗EGF検査はまだ研究中であり、エビデンスに基づく標準治療ではありません。しかしながら、不育症、着床障害はまだ未知の世界であり、エビデンスに基づく診療は非常に限定的です。そこで、新たに研究して新しいエビデンスを造る必要があります。私はAMED不育症研究班(旧厚労省研究班)に呼ばれ、「不育症の原因解明、予防治療に関する研究」を分担しました。当院研究所は、国から研究所として認定され(この管轄は文部科学省です)、厚労省から公費の研究費を支給され、不育症の新しい検査、治療を開発せよと国から指示され、開発した検査が、抗第XII因子抗体、抗プロテインS抗体、そして今回の抗EGF抗体です。全て英語の論文にしましたが、論文中には、国から研究費を支給された旨が明記されています。今回のデータは、当院を受診した患者さんで、当院の研究に参加するという同意書に署名して戴いた方のデータです。今後も、新しい検査を有効に使えるよう、研究を続けていく予定です。日頃、標準治療の大切さを説いている医師が、自分では標準治療を無視した診療をしていると思われるのは心外なので、一応立場を説明させて戴きました。

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