先ず、生化学的妊娠(いわゆる化学流産)の扱いですが、欧州生殖医学会(ESHRE)は不育症ガイドライン2017で生化学的妊娠を流産にカウントする事にしました。しかしながら、日本のデータでは、生化学的妊娠の多くは受精卵の染色体異常の自然淘汰であり、PGT-Aを行うと、生化学的妊娠は減る事が報告されています。しかし、海外では違う報告もあります。恐らく、生化学的妊娠の定義の差であると思われます。日本の生化学的妊娠の定義のhCG値が低いため、海外よりより多くの生化学的妊娠を検出しているからかも知れません。今回の提言では、一応、日本では生化学的妊娠は流産にカウントしないとしながら、繰り返した場合は不育症検査に準じた検査を行う事を考慮しても良いとしました。
次に、検査の項目ですが、不育症との関連が明らかでなく、不育症の検査として行う事が推奨されない検査を非推奨検査とし、その中に、Th1/Th2検査が入りました。また、不育症治療としてのタクロリムスの使用は、有効性に関するエビデンスが無く、かつ副作用の危険性があるので、使用しないとあります。研究治療として用いる場合には、必ず臨床研究法に従いながら倫理委員会の審査と承認を受け、患者同意を取得しなければならないとあります。今回の改訂委員会のメンバーには、生殖免疫学の世界的権威の研究者も複数おり、メンバー全員一致の意見です。
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