www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(14)60157-4/fulltext2014年のLancetと言う一流誌に載った論文によると、1228人の女性に対し、アスピリンとその偽薬を、患者も医者も本物のアスピリンか偽薬か分からないようにして、半年間毎日飲ませ、妊娠状況を見たところ (二重盲検法と言います)、アスピリンを飲んだ人が、偽薬を飲んだ人より、生児獲得率が多かったとあります。要するに、アスピリンを着床前から飲んだ方が、妊娠成功率が良かった訳です。患者個人の数回の移植の経験や、医師個人の臨床経験による印象は、エビデンスレベルが低いので、注意が必要です。研究は、二重盲検法の信頼性が高いです。本物と偽薬を、患者も医師も分からないようにして使うので、患者や医師の先入観、プラシーボ効果を排除でき、客観的なデータが得られます。結論として、移植周期の生理終了時からのアスピリン開始は、妊娠率を高める事はあっても、着床の邪魔をする事は無いと言うのが、当院の意見です。ちなみに、ヨーロッパ生殖医学会不育症ガイドラインでも、日本の不育症管理に関する提言2021でも、アスピリンは妊娠前からの投与が推奨されると書いてあります。もしも、アスピリンの副作用で着床が邪魔されるのであれば、世界のエビデンスが覆されることになります。着床しない場合は、アスピリンのせいにするより、他の原因を探した方が良いのかもしれません。しかしながら、私は、不要なアスピリンの投与はお勧めしません。何度良好胚を戻しても着床しなかった既往があり、なおかつ当院の凝固系検査で異常が見つかった人だけが飲むべきです。全員に、移植周期の初めからアスピリンを飲ませるクリニックもありますが、健康な人に薬を投与する場合、副作用のリスクは必ずあります。薬は、必ず診断のもとに、適切に処方されるべきで、検査も診断も抜きで全員に自動的に処方するものではありません。それは、医療とは言えません。
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