当院の着床障害患者の妊娠成功例の紹介。ERA検査やヘパリンの考え方。【過去コラムより】
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当院の着床障害患者の妊娠成功例の紹介。ERA検査やヘパリンの考え方。(2020/3/8)
日々、着床障害の方が当院受診後に初めての胚移植で妊娠できたという嬉しい報告が届いています。
その経験を他の患者さんにもシェアしたいという要望もありますので、若干考察を交えて紹介します。
当院の検査で異常が見つかった人は、ERA検査で着床の窓がずれている事があります。(コラム「ERA、EMMA、ALICE、CD138、Th1/Th2検査を受けるか、迷っている方へ」の「2.ERA検査と当院の着床障害検査の関係について思う事」参照)
これまで、当院の治療(低用量アスピリン療法など)でERA検査が補正されたと考えてずらさずに移植するべきか、当院の治療を行いつつ、ERA検査の結果に従ってずらして移植するべきか、不明でした。
最近の妊娠成功例は、今のところ、当院の治療をしつつERA検査に従ってずらして移植した人たちです。
当院受診前にERA検査に従ってずらして移植しても妊娠しなかった方が多いので、ERA検査に当院の治療をかぶせることで上手く行った様です。
一番衝撃的な報告は、8回移植して1回も着床しなかった人が、当院受診後に1回目の移植で妊娠した例です。
この方は、体外受精にステップアップする時に不妊クリニックで予め着床障害検査を受け、プロテインSがやや低値だったため、移植日よりアスピリン+ヘパリン自己注射を初回の移植からしていました。
CD138検査も陰性で慢性子宮内膜炎も否定され、途方に暮れて当院を受診されました。
当院で詳細かつ正確な検査を行ったところ、プロテインSを含め、全て全く異常なしの結果でしたので、全く無治療での移植をお勧めしたところ、1回目で妊娠できました。
ヘパリンが着床の邪魔をする可能性については、既に「胚移植からのヘパリン投与は着床障害に効くどころか、着床を邪魔する可能性がある」のコラムで紹介しましたが、さすがに私もビックリしました。
移植日からヘパリン、プレドニン、タクロリムスなどを投与しているクリニックがありますが、これらの薬はアスピリンと異なり、かなり強力な薬ですので、健康な人に投与して大丈夫なのか心配です。
もしかしたら、着床に逆効果かもしれません。
薬の副作用で健康を害した人も多く、さらに自己注射はストレスも大きいので、注意が必要です。
着床はメンタルが大きく影響するので、治療のストレスで着床し難くなっている可能性もあります。
何でも過剰にやれば患者が喜ぶという考えは、医学とは違うと思います。
「過ぎたるは及ばざるが如し」です。
以前より申し上げているように、当院の目標は、異常が無いという診断ができる様になる事ですので、治療して上手く行くのは喜ばしいのですが、異常が無いと言う診断が良い結果を生む事の方が、嬉しく感じます。