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アスピリンはいつまで飲むべきか。28週?36週?【過去コラムより】

ホームページリニューアルに伴い、過去に掲載したコラムを引っ越しました。

アスピリンは、鎮痛解熱剤として100年に渡り使われています。
1967年に抗血小板作用が発見され、今では低用量アスピリン療法は、抗血小板薬として広く使われています。
抗血小板作用は、普通の鎮痛解熱剤の用量ではなく、低用量でないと効かないので、昔は、含有量が81mgの低用量である「小児用バファリン」が適応外で使用されていました。
しかし、適応外使用の改善から、 日本循環器学会など関連学会から強い要望が高まり、厚生省に要望書を提出、2000年に承認され、販売名称を変更し、「バファリン 81mg 錠」となりました。
その後、同じ低用量アスピリンとして、バイアスピリン錠100mgも2005年に販売されました。
ちなみに、現在小児用バファリンという商品名で市販されているものは、アスピリンではなく、アセトアミノフェンが入っていますので、不育症には無効ですのでご注意ください。

問題は、この時に、薬剤添付文書に、妊娠28週以降は禁忌と書かれたことです。
当時、既に我々不育症専門医は、低用量アスピリンとして「小児用バファリン」を国際的標準投与法に従い、妊娠36週まで出していたので、困惑しました。
アスピリンを妊娠36週まで投与する事の安全性は、既に国際的に確立しています。
規則を守るのか、エビデンスを守るのか、医師も判断が分かれています。

日本ではまだ一般的ではありませんが、欧米では、妊娠高血圧腎症のハイリスク症例に対して低用量アスピリンが投与されており、国際妊娠高血圧学会でも、2017年の治療管理指針で、アスピリンを妊娠初期から36週までの投与を推奨しています。
日本では、「産婦人科診療ガイドライン2023」で、低用量アスピリンは、妊娠28週以降は禁忌とされているが、抗リン脂質抗体症候群の場合は妊娠36週まで、妊娠高血圧の予防の為なら分娩までアスピリンを投与しても良いと書かれています。

そして「不育症管理に関する提言2025」では、次の様に書かれています。39~41ページを参照ください。 

“投与期間は添付文書では分娩前12週の投与は禁忌となっているため、妊娠27週末までとするが、欧米では妊娠後期にも継続投与することが一般的である。
必要と判断すれば患者の同意を得て継続し、妊娠36週前後を終了の目安とする。
産婦人科診療ガイドラインでは、妊娠28週以降はその必要性を血栓の有無、検査値、既往産科異常の内容、重症度や発症時期、各施設の状況により十分検討した上で、妊娠36週まで投与する事が推奨されている(推奨度 B)(産婦人科診療ガイドライン 2023 産科編;CQ104 39 2)。
アスピリンの終了時期については産科麻酔に関わる問題(麻酔合併症の問題から腰椎麻酔、硬膜外麻酔がアスピリン内服下ないし終了直後は実施できない施設もある)、分娩時の出血傾向に配慮し、各施設および個々の患者の状況により判断する。”

以上、最近の低用量アスピリン療法の動向を解説しました。

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