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私が分娩間際まで不育症管理をしている訳。低出生体重児は生活習慣病になり易い (DOHaD)説について【過去コラムより】

ホームページリニューアルに伴い、過去に掲載したコラムを引っ越しました。

近年、DOHaD (Developmental Origins of Health and Disease) 説が注目されています。
2500g未満で生まれた低出生体重児は、将来的に、虚血性心疾患、糖尿病、本態性高血圧、メタボリックシンドローム、脳梗塞、脂質異常症、神経発達障害などの発症リスクが増加する事が分かっています。
以前は、小さく産んで大きく育てるという発想がありましたが、それが覆された訳です。
DOHaD説を簡単に説明すると、子宮内で栄養不足になると胎児の遺伝子の働きがそれに順応し、低栄養の環境に適応したメカニズムを作って生まれてくるので、出生後の普通の栄養状況が栄養過多になり、生活習慣病の発症のリスクが高くなるという説です。
以前は、妊娠中の体重管理は増えすぎ注意に重点が置かれていましたが、増えなければ良い訳ではなく、ある程度は増えなければいけない訳です。

さて、不育症専門医としては、DOHaD説の注目は歓迎します。
何故ならば、不育症の場合は、胎盤血栓により、胎児に十分な栄養が行かないため、流産したり、低出生体重児で生まれる事が多いからです。
DOHaD説の論調は、妊娠中のダイエットなど妊婦の不適切な栄養摂取を問題視していますが、不育症の様な病気の存在はまだ注目されていません。
日本の統計では、低出生体重児の頻度は9.6%ですが、当院の患者さんでは12.4%で、明らかに高頻度です。
内訳は、第Ⅻ因子欠乏、抗PE抗体陽性、プロテインS欠乏などの患者さんが高頻度でした。

不育症の治療の是非を議論する時、生児獲得率で統計を取る事が良くあります。
例えば、第Ⅻ因子欠乏患者に対してアスピリンを投与してもしなくても生児獲得率に差が出なかったので、第Ⅻ因子の検査も治療も不要であると主張する研究者もいます。
しかし、私はDOHaD説まで考慮して治療を検討してきました。
以前、私が抗リン脂質抗体症候群の患者で妊娠35週までのヘパリン治療続行を勧めたにも関わらず、28週で治療を中止させた病院があります。
その後、その病院から無事に?1900gの元気な赤ちゃんが産まれましたという報告がありましたが、私は非常に複雑な心境でした。
その病院の医師は、28週で治療を止めても大丈夫だったと考えたのか、治療は続行するべきであったと判断したのか、私は知りたい。
でもその後は、当院で35週まで治療続行していた別の患者さんが同じ病院に通院しても咎められなかったので、少し安心しています。

私が分娩近くまで不育症管理をしている理由は、出来れば2500g以上に育ててあげたいからです。DOHaD説を出すまでもなく、生児獲得率などという、「生きて産まれりゃ良いじゃない」的な発想は、私は好きになれません。
不育症治療をしてやっと産んだこどもを育てる親の気持ちになって考えるべきです。

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