NK活性について【過去コラムより】
ホームページリニューアルに伴い、過去に掲載したコラムを引っ越しました。
【目次】
- NK活性について
- NK細胞活性が異常低値で悩んでいる方へ
NK活性について(2013/03/31)
2013年に開催された日本産科婦人科学会において、「末梢血NK活性高値は不育症の予知因子とならない」という名古屋市立大学の研究報告が発表されたので紹介します。
▼抄録のリンクを貼ります。
www.jsog-oj.jp/detailAM.php
名古屋市立大学は以前、末梢血NK活性高値が不育症の危険因子である事を報告しましたが、否定的な報告もあり賛否両論でした。
現在でも多くの施設でその測定が行われていますが、大規模な調査により、NK活性高値は不育症の危険因子では無い事が判明したそうです。
したがって、これを測定して治療評価として用いるべきでないと結論付けています。
私も、東海大時代にNK活性を調べましたが、不妊の人も不育症の人も、皆NK活性が高値であり、カウンセリングを行うと下がりました。
したがって、NK活性高値は、不妊や不育症の原因ではなく、ストレスの結果として上昇していると考えました。
NK活性高値の人に何らかの治療を行えば、その治療の効果ではなく、プラシーボ効果としてNK活性は改善すると考えられます。
カラオケや落語で改善するのではないかと研究を試みたこともありますが、さすがに1回のカラオケでは効果は出ず、研究費がカラオケ代でとんでしまいますので、この研究は断念した経緯があります。
当院でも開院当初は、ニーズがあったためNK活性を測定していましたが、案の定、皆高値であり、治療がある訳でもなく、エビデンスの乏しい検査に8000円払う価値は無いと判断し、削除してしまいました。
当院の不育症検査は項目が多く、エビデンスのある検査は全て網羅していると思いますが、NK活性検査のみやっていないと言う指摘を時々受けます。
抜けているのではなく、抜いているのです。
また、NK細胞活性高値の場合の治療としてイントラリピッドを使用するところもあるようです。
イントラリピッド療法については、下の関連記事一覧にある「Th1/Th2検査、タクロリムスについて」のコラムで詳しく解説していますので、ご参照ください。
NK細胞活性が異常低値で悩んでいる方へ
NK細胞活性はストレスで上昇するので、不妊の人も、不育の人も、皆測定すると高値に出ます。
そして、カウンセリングをすると下がります。
NK細胞活性は、原因ではなく、結果であると思われます。
2018年に出されたヨーロッパ生殖医学会不育症ガイドラインでは、推奨されない検査として、NK細胞検査が挙げられています。
参考までに、NK細胞活性に関する論文を紹介します。
medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/346288.html
ところで、最近、他院にてNK細胞活性を測り、0%とか、3%とか、異常に低値で心配されている方が多く来院されます。NK細胞活性の検査で、10%未満の人は、採血した後に血液が長時間放置されていた可能性があります。
NK細胞活性の正常値は、18~40%です。
NK細胞活性の検査は、月から金曜日の曜日指定があり、土日は提出できません。
しかも、採血当日に提出する必要があります。
異常低値の人は、土日に採血していた人が多かったです。
平日に採血した人も、おそらく他の採血検体と一緒にそのまま検査会社に回収されるまで放置し、翌日以降に提出したと思われます。
これでは、NK細胞が死んでしまいますので、活性がゼロでもおかしくありません。
高額な検査なので、もしも土日に採血が行われた場合は、検査結果に信頼性はありませんので、無料で再検査をお願いした方が良いと思います。
採血検体の取り扱いに無頓着なことから、同じ日に提出した他の検査項目(特に凝固系検査)も、信用しない方が良さそうです。