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第Ⅻ因子とプロテインSの検査は活性ではなく、抗第Ⅻ因子抗体、抗プロテインS抗体の測定が重要である【過去コラムより】

ホームページリニューアルに伴い、過去に掲載したコラムを引っ越しました。

【目次】

  1. 第Ⅻ因子とプロテインSの検査は、活性ではなく、抗第Ⅻ因子抗体、抗プロテインS抗体の測定が重要である
  2. 第Ⅻ因子欠乏にヘパリンは必要か

当院は、第Ⅻ因子活性やプロテインS活性を測定していますが、実はこれらの検査は正確に測定する事は難しく、採血から検体の処理まで繊細な取り扱いが必要です。
他院でこれらの検査を行って結果を持参しても、当院で再検査するのはそのためです。
また、当院は活性だけでなく、第Ⅻ因子やプロテインSに対する自己抗体の測定が可能です。

当院は、第Ⅻ因子欠乏やプロテインS欠乏が直接的な原因ではなく、第Ⅻ因子やプロテインSに対する自己抗体の存在が流産、着床障害の本当の原因であると考えています。
これらの自己抗体検査は、AMED不育症研究班の科学研究費の援助もあり、当院の研究所で開発しました。
この件は、こども家庭庁の「不育症管理に関する提言2025」、フイク-ラボでも解説されています。参照下さい。

▼不育症管理に関する提言2025
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/57921560-ab1e-4032-bb58-eb62f0bce33d/e24df942/20250617_policies_boshihoken_fuiku_09.pdf

▼フイク-ラボ
fuiku.jp/fuiku/risk.html

この検査は、現時点では当院でしか検査できません。
当院研究所は、血液データ(特に凝固系検査)の採血や検体処理を厳格に行なっており、第Ⅻ因子、プロテインSに関して正確な検査データを得ることができます。
なおかつ自己抗体の検査もできますので、正確で最先端の診断が可能です。

近医で第Ⅻ因子欠乏に対し、ヘパリンを勧められている方が受診されることがあります。
当院では、第Ⅻ因子欠乏に対しては、AMED(旧厚労省)不育症研究班の提言に従い、基本的に低用量アスピリン療法の方針です。
治療方針というのは、各医師の個人的持論で決めるのではなく、エビデンスに基づく医療(EBM)が重要です。
AMED不育症研究班は、日本の不育症専門医の選抜チームで構成されており、平成20年から不育症患者のデータベースを作り、膨大な患者数のデータをもとに治療方針の検討を行ってきました。
データベースには、当院の患者さんの治療成績も含まれております。

その結果、第Ⅻ因子欠乏患者に対し、無治療と治療した群の生児獲得率が分かっています。
全て、胎児染色体が正常であった症例です。
無治療で妊娠した場合の生児獲得率は、50%でした。
流産胎児の染色体は全て正常でも、半分は流産となりました。
低用量アスピリンで治療すると、生児獲得率は96.8%で極めて良好でした。
一方、ヘパリンを併用した場合の生児獲得率は、77.3%であまり良くありませんでした。
恐らく、第Ⅻ因子欠乏は流産の原因ではなく、血液凝固系以外の異常があった症例が含まれていたのかもしれません。

第Ⅻ因子欠乏は、抗第Ⅻ因子抗体の有無で病原性が変わるため、第Ⅻ因子欠乏のみでは不育症の原因ではない事があります。
当院は、抗第Ⅻ因子抗体の検査を参考に、治療方針を決めています。
結局、第Ⅻ因子欠乏に対して低用量アスピリンは極めて有効であり、ヘパリンを併用する理由はありません
当院をはじめ、AMED不育症研究班は膨大なデータベースの治療成績に基づくエビデンスのある不育症診療を行っています。

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