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不育症検査が全て異常なしの場合、原因不明不育症と考えるべきか、不育症ではないと考えるべきか【過去コラムより】

ホームページリニューアルに伴い、過去に掲載したコラムを引っ越しました。

これはなかなか難しい問題です。
私の不育症診療の目標は、異常なしという診断ができることです。
異常なしという診断が一番難しい診断であり、それができる不育症専門医を目指しています。

流産を繰り返した人の次回妊娠成功率は皆さんが思っているよりは良好です。
例えば、2回流産した人が、何の検査も治療もしないで3回目の妊娠をした時の妊娠成功率は80〜90%でかなり良好です。
このデータより、2回流産した時点ではまだ不育症検査をする必要が無いという意見もあります。
逆に言えば、2回流産した人に不育症検査をしても、明らかな原因が見いだされない事が多いはずという事になります。
私は、2回流産歴のある人に不育症検査をやる意義は、異常の無いことを確認するためという意味合いが強いと考えています。

私も以前は、患者さんに対してなるべく何らかの異常を指摘し、何らかの治療方針を提示するようにしていました。
しかしながら、今、冷静に考えるとその考え方は不適切であったと言わざるを得ません。
でも、何らかの異常があると診断し、治療が必要であると言う方が、医師としては楽です。
不育症検査をして、何も異常がなかったので、異常なしと診断して次回妊娠は無治療という方針を提示すると、納得がいかなくて異常ありと言ってくれる医師を求めて転院する人もいます。
また、もし無治療の方針で次回妊娠結果が悪ければ、治療方針の誤りを疑われます。
流産は妊娠全体の約15%に起こるので、100%の成功率はありえないにも関わらずです。
だからといって、不育症検査で異常値がでたからそれが原因であると診断する事は安易です。

例えば、高プロラクチン血症(特に潜在性高プロラクチン血症)、症状のない軽度甲状腺機能異常(特にTSHのみ異常の場合)、黄体機能不全、NK活性などは、異常値がでてもそれが本当に過去の流産の原因であったかというと、非常に疑問です(これは私個人の見解ではなく、国際学会のコンセンサスです)。
しかしながら、それらに対する治療を行い、次回の結果が良好であれば、治療の成果と感謝され、結果が悪くても、やる事はやってもらったので悔いは無いと感謝されるのです。
したがって、医師としては、兎に角患者が来たらば、何らかの異常を提示し治療を施せば、患者の評判は悪くならない訳であり、そうして医療のレベルは低下していきます。
間違った原因を治療している間に、正しい原因を見逃す事になります。
今まで、幾つものいかがわしい不育症検査、治療が横行しては、消えていきました(夫リンパ球免疫療法など)。
その間、正当な不育症診療は停滞したのです。
正しい診断無しには正しい医療はあり得ません。
患者の希望である程度ステップアップした治療を行う事はありますが、それは検査データを踏まえて、正しい診断をした上で行う事であり、検査データなどの根拠なく行った治療が偶然同じ治療であったとしても、同質の医療では無いのです。

統計によると、当院で行っている不育症検査を施行し、異常の見出されなかった不育症患者に対し、異常なし(不育症で無い)と診断して無治療で次回妊娠にのぞんだ場合の生児獲得率(無事分娩した率)は88.6%で極めて良好でした。
この結果は、我々が行っている不育症検査は不育症の原因の殆どを網羅しており、検査に異常が無かった人に対して異常なしという診断を下しても多くは間違っていないと言う事を教えてくれました。
もちろん、だからと言ってやせ我慢して無治療で次回妊娠に臨まなければいけないと言う事もありません。
何かした方が安心というのも人情です。
副作用の少ない薬やサプリならば念のため飲むのも良いでしょう。
漢方などの東洋医学も良いでしょう。
外来で相談の上、より良い方針を決めましょう。
異常無しというベストの診断のもとに、さらに念のための対策を行えば、鬼に金棒です。
異常無しという診断をポジティブにとらえ、次回妊娠を安らかに過ごしていただければと思います。

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