杉ウイメンズクリニック

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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック

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流産とは
 流産というのは決して病的なものではありません。誰でも一度妊娠すると約15〜20%の率で流産を経験すると言われています。流産率は女性の年齢とともに増加し、35歳で約20%、40歳で約40%、42歳で約50%と報告されています。流産の理由の多くは染色体異常胎芽・胎児の自然淘汰です。受精卵の染色体異常率は約40%と言われていますが、その殆どが出生前に淘汰されて実際に染色体異常を持って生まれてくる新生児は0.6%にすぎません。多くの淘汰は着床前後の細胞レベルの時に起きるので本人は気が付きませんが、中には妊娠が分かってから淘汰が起こる事もあり、それがいわゆる自然流産です。この様な機序で起こる流産は病的ではなく、止める事もできないし止める必要もないということになります。

習慣流産、不育症とは
 しかしながら、流産が繰り返し起こる場合は病的ではないとは言えません。一回の妊娠で流産する確率を20%と仮定すると、何も異常の無い人でも2回流産を繰り返す確率は0.2の2乗で4%、3回流産を繰り返す確率は0.2の3乗で0.8%となり、特に3回以上流産を繰り返す習慣流産の場合は運が悪かったで片付ける前に、何か流産を起こしやすい原因があるのではないか検査する必要があります。また、妊娠中期以降の子宮内胎児死亡は珍しく、この場合は一回でもその原因を検査する必要があります。このように妊娠初期流産を3回以上繰り返す習慣流産や、妊娠中期以降の胎児死亡が一度でもあれば不育症を疑い、原因を調べることをお勧めします。

不育症の原因と治療
 不育症の原因は、感染症、内分泌異常、子宮形態異常、染色体異常、免疫学的原因、血液凝固異常など多岐に渡っており、系統立てた検査が必要です。一般に不妊症の一部として扱われ、不妊症の専門医がついでに不育症を診ている事が多い様ですが、不育症は高度に専門的な知識が必要であり、不妊症の知識の延長で診断、治療することには無理があります。当院では不育症専門の外来、学級を設けて最先端の診療をしています。

抗リン脂質抗体症候群とは
 不育症の中での最近の一番のトピックスは抗リン脂質抗体症候群です。抗リン脂質抗体という自己抗体が体の中にできると血栓症や流産が引き起こされると言うもので、最近非常に注目されています。当院では一般病院では出来ない抗リン脂質抗体精密検査を行っています。また、その治療法としてヘパリン自己注射療法がありますが、欧米では広く行われており、有用性も安全性も確立しているにもかかわらず、日本では未だ施行している施設は少ないのが現状です。我々は日本で初めてヘパリン在宅自己注射を本格的に導入し、日本最多の臨床経験を持ち実績をあげています。

不育症と血栓症
 抗リン脂質抗体や、一部の血液凝固因子異常などの血栓性素因は、胎盤の血栓を介して不育症の原因になり得るだけでなく、狭心症、心筋梗塞、脳硬塞、肺梗塞などの重篤な血栓症の原因にもなり得ます。つまり妊娠のトラブルは妊娠中のみならず将来のより重篤な疾患の黄色信号であるとも考えられるわけです。血栓症だけでなく、糖尿病や高血圧など妊娠中のトラブルで隠れた疾患が発見されることも珍しくありません。不育症の可能性のある人は無事赤ちゃんを産むという目的だけでなく、将来おこり得る疾患を予防するという意味でもきちんと不育症専門医に診てもらうことが肝要です。

各論に関しては、著書「EBMに基づく不育症診療の実際」、「不育症学級」をお読み下さい。

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