杉ウイメンズクリニック

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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック | 院長コラム

新型コロナウイルスとアスピリン、タクロリムスについて

2020/03/22

最近、新型コロナウイルス感染の疑いがある場合は、イブプロフェンは飲まない方が良いというニュースがあり、それを受けて、当院の患者さんから、低用量アスピリンは大丈夫なのか、問い合わせがあります。その後、WHOが、イブプロフェン服用について、控える事を求める勧告はしないと表明したそうですが、アスピリンも同様と思います。さらに、不育症、着床障害の人のアスピリンは低用量なので、炎症に関わるプロスタグランジンを抑える効果は無く、理論的にも問題ないと思います。
ところで、当院は処方していませんが、タクロリムスは、免疫抑制剤なので、感染症の発現または増悪に十分注意する事と添付文書に明記されています。CDC(米国疾病予防センター)は、新型コロナウイルス感染症による重症化のリスクが高い人に、免疫抑制薬の使用を挙げています。日本でも、厚労省が定めた新型コロナウイルスの相談、受診の目安の中で、重症化し易い人として免疫抑制剤を用いている方とあります。一部の免疫抑制剤は新型コロナウイルスの治療に有効である可能性が示唆され、研究が始まっていますが、現時点ではその候補薬にタクロリムスは含まれていません。新型コロナウイルスは、T細胞に感染してT細胞を破壊し、免疫不全とサイトカインストームを引き起こす事が分かってきましたが、タクロリムスはまさにT細胞を抑える免疫抑制剤なので、理論的には、治療効果を期待するよりもむしろ新型コロナウイルスが重症化し易いと考えられます。さらに、タクロリムスの添付文書によると、ワクチンの効果を減弱させる事があると書いてあります。もし、新型コロナウイルスのワクチンが開発されても、タクロリムスを飲んでいると、効果が減弱する可能性があります。新型コロナウイルスは、まだ不明の点が多すぎて、何が安全で何が危険なのか、エビデンスが全くない状況です。現時点で、タクロリムスは低用量なら安全と考えるのは、余りにも安易です。健康なのにタクロリムスを飲んでいる人は、新型コロナウイルスの発症、重症化のリスクが高い可能性がありますので、十分注意して下さい。

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