杉ウイメンズクリニック

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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック | 院長コラム

現在の初診予約状況、新しい不育症検査について。

2011/10/09

現在、初診予約は相変わらずの4ヶ月待ちです。しかし、キャンセル待ちで2ヶ月以内の待ちで済む人もチラホラいます。
今年の春から当院研究所で試運転中だった新しい不育症検査が、いよいよ実用化間近です。現在、基準値の設定がほぼ終了し、正式な検査項目として、間もなく当院の不育症スクリーニング検査に加える予定です。別に、当院独自の検査という訳ではなく、国際血栓止血学会のガイドラインに準拠し、日本血栓止血学会の推奨する検査試薬を用いた検査なのですが、当院の不育症研究所の様な施設、専属技師がいない一般不育症外来では出来ない検査です。この検査では、ループスアンチコアグラントという抗リン脂質抗体の検出(dRVVT法では検出できないタイプ)ができ、抗PE抗体や抗第XII因子抗体の確認検査としても有用です。第XII因子欠乏症は、抗第XII因子抗体を持つ場合のみ流産の原因になりますが、この検査でその抗体の有無を確認する事が可能です。
第XII因子は欠乏しただけでは流産の原因にはなりませんので、何パーセントという数字だけでアスピリンやヘパリン療法の方針を決めてはいけません。抗第XII因子抗体の有無と、その病原性を見なくてはいけません。抗体の有無は、今回導入する新しい検査で分かります。その上で、抗PE抗体を併せ持つのか、血小板凝集能検査で亢進しているのかなどで、病原性を判定し、治療方針を決定します。単に、検査伝票の第XII因子活性という項目に丸を付けて検査を提出し、診断しているだけでは無いのです。また、第XII因子活性検査も、検査キットで測定値がかなり異なりますので、異なる施設で測定した活性値を比較する事は無意味です。当院でも、2種類の検査キットで測定しますが、10%以上の差がでます。検査キット毎の基準値を決めなくてはいけません。
当研究所は、抗PE抗体や、抗第XII因子抗体を妊娠したネズミに投与すると、胎盤に血栓と出血が見られたと言う論文を最近アメリカの国際医学雑誌(アメリカ生殖免疫誌)に発表しましたが、今回の新しい検査はその知見を皆さんの診療に反映する事が可能です。現在、他の基礎的な研究も同時進行中です。
研究成果は、全て学会で発表予定です。年内は、日本生殖医学会でシンポジウム講演、日本生殖免疫学会でも講演予定です。当院では、新しい検査、治療成績は全て公開し、専門家にその是非を問い、また、他大学の不育症外来を啓蒙する方針です。
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