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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック | 院長コラム

【NK細胞活性の問題点】18回流産歴のある女性が無事出産したという英国発のニュースに関する院長コメント

2010/02/21

英国の2月19日のローカル新聞に、18回流産歴のある33歳の女性が出産したというニュースが載りました。大変喜ばしい事です。しかしながら、その新聞記事を読むと、幾つか重要な問題点が浮かび上がって来ます。この英国のローカル新聞を鵜呑みにして日本の不育症患者さんが間違った考えを持たない様、ここにニュースの解説をしたいと思います。


ちなみに、読んだ新聞は下記にリンクを貼りました。


www.yorkshirepost.co.uk/news/Baby-joy-at-last-for.6087519.jp


まずは、要約を書きます。
この女性は、13年前から妊娠8週未満の初期流産を繰り返しています。例によって、医師は良くある流産を繰り返しただけだと言っていたようです。しかしながら、2006年に不育症専門医に出会い、約2万8千円でEpsom, Liverpoolとアメリカでしか検査出来ない特別な検査であるNK細胞を調べたところ、高値でした。NKが高値というのは、約15%の女性に見られる良く有る問題です。そこで、不育症専門医は、ステロイド1日25mgを受精2週間前から受精後12週間使用しました。ところが、副作用の糖尿病が出現し、結局流産してしまいました。女性は、これでもうあきらめる様説得されましたが、納得せず、再度妊娠に挑戦し、この度無事に出産に至りました。


上記新聞報道の問題点は、NK高値が過去の流産の原因であり、ステロイド療法が効果を上げたと決めつけている事です。私の今までの経験では、おそらくこの女性は他の原因があり、たまたまステロイド療法が奏功したのでは無いでしょうか。同じ英国のBritish Medical Journal誌という一流医学誌に、既にその問題点が指摘されています。


medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/346288.html


記事にでてくる不育症専門医は、2004年からたった1000人の不育症患者しか診た経験がありません。NK細胞検査は、世界で3カ所でしか出来ないと別の新聞には書いてありましたが、日本ではどこでもできます。しかも、日本の検査会社の定価は8000円であり、当院も8000円で検査を行っています。英国の28000円は高いというか、日本が安すぎるのだと思います。また、治療のステロイド療法は、日本では普通に行われており、当院でも現在行っている患者さんがいます。ステロイド療法の一番の副作用は、妊娠中の糖尿病ですが、この医師はそれを見逃し、流産させてしまっています。
日本の不育症診療は世界一であり、現在も英国や米国在住の人が当院へ来院されています。英国の方が医学は上と勘違いしている人がいますが、とんでもない事です。
この記事を読んだ私の感想は、皆さん日本人で良かったねという事です。日本なら殆ど無策で18回も流産させるような事はしません。もちろん、日本にも原因不明で10回以上流産している人はいます。でも、アスピリン、ヘパリン、ステロイドなど全てトライして無効だった人達です。一緒にしないで欲しいです。
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