杉ウイメンズクリニック

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当院と漁業の不思議な接点ー10本以上採血してはいけない訳
2017/03/17(金) NEW

当院の検査室には、マイナス60度のフリーザーが置いてあります。皆さんから採血した血液を、急速冷凍するためです。実は、フリーザーを購入する時、医療機器を探すつもりで探していたら、何と、◯◯水産のフリーザーが沢山売られていました。そうです、魚屋さんに良く置いてある、中にタラバや魚が入っている例のフリーザーです。魚を、細胞を壊さず美味しく冷凍するためには、マイナス1度からマイナス5度を素早く通過させて急速に冷凍する事が必要です。そこで、マイナス60度のフリーザーが必要なのです。当院で検査している血液凝固因子も蛋白質ですので、壊れない様、同じ様に急速冷凍する必要があります。そんな訳で、当院研究室にも魚屋さんと同じくフリーザーが置いてあるのですが、残念ながら、海の幸は入っていません。

しかしながら、魚は、穫れたてをフリーザーに入れて急速冷凍すれば、美味しいのかと言うと、違うそうです。最近は、冷凍技術と流通の発達により、海外で穫れたての魚を冷凍して日本に持ってきて食べることが出来るようになりました。しかし、海外の魚は、何故かあまり美味しく感じません。それは、海外では血抜きをしていないからだそうです。日本では、穫れた魚は、直ぐに活け締めなどの血抜きをして鮮度を保ちます。これをしないと、いくら急速冷凍しても、美味しくありません。実は、採血も同じです。当院では、採血した直後に、直ぐに遠心分離して血漿を分離します。血漿から血小板を除去する訳です。これを怠ると、血液凝固系検査は、全く信頼できなくなります。当院は、検査を検査会社に外注する場合も、この処理をした後、血漿を急速冷凍して検査会社に提出します。採血現場でしか出来ない処理ですので、沖漬けや、魚の血抜きみたいなものです。

血抜きは、魚一匹ずつやるので、海外のように、網で一気に獲ると、出来ません。採血も、一度に10本以上取ると、処理が追いつきません。また、10本以上取った場合、最後の方に血液凝固系検査などの検体があると、信頼性が無くなります。長時間腕を駆血すると、既に血管内で血小板が活性化し、固まり易くなりますし、採血も時間がかかると、採ってる最中に血液は凝固し易いです。これでは、沢山獲れて血抜きをしない魚と同じです。沢山の項目を調べたければ、2回に分けるべきです。10本以上の採血オーダーを出している医師は、現場の採血や検査の重要性が分かっていないのでしょう。例えて言えば、血抜きを知らない漁師です。ちなみに、当院が少ない本数の採血で沢山の検査ができるのは、院内の検査室で測定しているからです。一般の病院、クリニックの場合は、検査会社に検査を外注しているので、各検査会社、各検査部門毎に血液1本ずつ渡さなければいけないので、本数が増えてしまいます。

不育症の検査は、外来で検査伝票にチェックを入れれば、自動的に次回外来時に結果が出ると思っている医師が殆どですが、実際は、信頼性の高い検査をする為には、かなりの手間がかかります。日本の漁業は、漁師の伝統の血抜きの技から、流通システムまで、素晴らしいです。そのお陰で、我々は、極上の刺身を戴くことができます。煮たり焼いたりすれば、血抜きしなくても分かりませんが、刺身は、そうではありません。不育症検査も、抗体検査は血液の扱いが雑でも比較的大丈夫ですが、凝固系検査は、刺身と同等です。当院も、検査室を併設し、血液凝固系の採血の仕方を看護師に指導し、不育症専門の臨床検査技師を育て、此処まで来ました。この様な努力は、表に出ませんが、当院は検査に絶対的な自信を持っています。正確で信頼性のある検査をご希望の方、ベテラン漁師(看護師、検査技師)に血抜きをして欲しい人は、是非当院で検査を受けて下さい。

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