杉ウイメンズクリニック

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当院研究所が今一番注目している検査-EGF系の破綻による不育症、着床障害について。原因不明の着床障害、不育症のブレークスルーになるか。
2019/07/13(土)

当院研究所では、不育症、着床障害患者に第XII因子欠乏、プロテインS欠乏が多く見られる事、その原因として、抗第XII因子抗体、抗プロテインS抗体が存在する事を発見し、国際学会に論文を発表してきました。これらの抗体は、血液凝固系を亢進させ、胎盤に血栓を引き起こして流産を起こすと考えられます。

しかしながら、抗プロテインS抗体は、プロテインSEGF領域を認識する事が分かり、昨年、国際血栓止血学会 (ISTH) のオフィシャルジャーナル (Res Pract Thromb Haemost) に論文を発表しました。そして今月、抗第XII因子抗体も同様に第XII因子のEGF領域を認識する事がわかり、血栓止血学の一流ジャーナル (TH Open)に論文が載る事になりました。つまり、ここに来て、血液凝固とは違う病原性が浮かび上がってきた訳です。

EGF (epidermal growth factor) とは、上皮成長因子と言って、血管新生を促す役割があります。子宮内膜も胎盤も血管の塊であり、子宮内の第XII因子やプロテインSは、EGF領域を介して子宮内膜や胎盤を育てるという生殖には重要な役割があります。このEGFを認識する抗体が、抗プロテインS抗体や抗第XII因子抗体であり、子宮内膜の血管新生、増殖を阻害し、着床しづらい内膜にしたり、胎盤血管新生、胎盤形成を阻害し、流産や胎盤血管障害を引き起こすと考えられます。つまり、血液凝固とは全く異なる、新しい着床障害、不育症の原因が、期せずして解明されつつあります。これは、当院研究所発の世界で初めての仮説です。

当院は既に、当院独自の検査として、抗第XII因子抗体や抗プロテインS抗体のウエスタンッブロット法による測定を行っていますが、今回、新しい病原性が解明された事により、治療方針の選択肢に幅が出てきました。また、現在、EGFの抗体をELISA法で検出する新しい検査も開発中であり、近々、新しい検査として実用化できそうです。

ちなみに、当院研究所の研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (AMED) の研究費で、厚労省から新しい不育症の検査、治療を開発せよとの指令を受けて行っています。結果が出せて、嬉しく思います。

良い子宮内膜ができず、着床障害の人や、胎盤形成不全で不育症の人の多くは、現時点では原因不明で困っています。今回、当院研究所の研究成果は、原因不明の着床障害、不育症のブレークスルーになるのでは無いかと期待しています。

皆さんの受診をお待ちしております。


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