最近、「着床は炎症みたいなものだから、鎮痛解熱消炎剤のアスピリンを飲むと着床しなくなる」と言うフワッとした説明を医師から言われ、低用量アスピリンの服用を反対された患者がいます。確かに、高用量のアスピリンならそれもあり得ますが、低用量アスピリンは異なります。あまりにもフワッとした説明なので、ここに詳しく解説したいと思います。
着床の現場には、Coxと言う酵素があり、これがプロスタサイクリンと言う、炎症を起こすプロスタグランジンの一種を産生し、子宮内膜の血管透過性を亢進させるなどの炎症反応を起こし、着床に重要な役割を果たします。プロスタグランジンが無いと、着床は起きません。Coxには、Cox1とCox2があり、Cox1はトロンボキサンと言う血流を悪くする悪玉物質を産生します。さらに、Cox1とCox2は、着床に必要なプロスタサイクリンを産生します。Cox1が無くても、Cox2がバックアップするので、プロスタサイクリンの産生に問題はありませんが、Cox2が無いとプロスタサイクリンは産生できません。低用量アスピリンは、Cox1の阻害薬なので、悪玉のトロンボキサンの産生は阻害しますが、プロスタサイクリンの産生には影響無く、着床に有利に働きます。
世界のガイドラインでも、低用量アスピリンは、妊娠する前から飲むことが推奨されています。もし、低用量アスピリンが着床、妊娠の邪魔をするのなら、世界の常識が覆される事になり、大事件です。
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