杉ウイメンズクリニック

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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック | 院長コラム

第XII因子欠乏にヘパリンは必要か。

2019/06/14

最近、第XII因子欠乏に対し、ヘパリンを勧められている方が複数受診されました。当院では、第XII因子欠乏に対しては、AMED(旧厚労省)不育症研究班の提言に従い、基本的に低用量アスピリン療法の方針です。治療方針というのは、各医師の個人的持論で決めるのではなく、エビデンスに基づく医療(EBM)が重要です。AMED不育症研究班は、日本の不育症専門医の選抜チームで構成されており、平成20年から不育症患者のデータベースを作り、膨大な患者数のデータをもとに、治療方針の検討を行ってきました。データベースには、当院の患者さんの治療成績も含まれております。その結果、第XII因子欠乏患者に対し、無治療と治療した群の生児獲得率が分かっています。全て、胎児染色体が正常であった症例です。無治療で妊娠した場合の生児獲得率は、50%でした。流産胎児の染色体は全て正常でも、半分は流産となりました。低用量アスピリンで治療すると、生児獲得率は96.8%で極めて良好でした。一方、ヘパリンを併用した場合の生児獲得率は、77.3%であまり良くありませんでした。恐らく、第XII因子欠乏は流産の原因ではなく、血液凝固系以外の異常があった症例が含まれていたのかもしれません。第XII因子欠乏は、抗第XII因子抗体の有無で、病原性が変わり、第XII因子欠乏のみでは、不育症の原因ではない事があります。当院は、抗第XII因子抗体の検査を参考に、治療方針を決めています。結局、第XII因子欠乏に対して、低用量アスピリンは極めて有効であり、ヘパリンを併用する理由はありません。当院をはじめ、AMED不育症研究班は、膨大なデータベースの治療成績に基づくエビデンスのある不育症診療を行っています。是非、研究班のHPの提言や治療成績のページを覗いてみてください。

 

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