杉ウイメンズクリニック

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不育症、習慣流産、反復流産 杉ウイメンズクリニック | 院長コラム

化学流産をどう考えるのかー特にチェックワンファスト使用者のために

2010/08/22

下記の内容を「良くある質問、注意事項」のページにアップしました。


www.sugi-wc.jp/c_6.html


最近、生理予定日前後に妊娠検査、特にチェックワンファストを使用し、陽性が出た後に生理になり、悩んでいる方を多く見かけます。
毎回の様に生理予定日に検査を行い、陽性が薄くでも出れば妊娠、流産ととらえ、不育症外来を受診される方、あるいは、既に不育症検査が終わり、提示された治療方針にしたがい、アスピリンなどを高温期から飲んでいたのに化学流産になり、方針の再検討について相談に来られたりする方がいらっしゃいます。
この件に関するメール相談も良くありますので、その度私がお勧めしているのは、私の書いた「不育症学級」を熟読下さいと言うことです。特に、3~5ページと、58ページをお読み下さい。
そこに書いてありますが、重要な事は、着床前の胚盤胞の染色体異常率は25%もあるのですが、妊娠判明時には10%に減っているという事です。要するに、多くの染色体異常をもった受精卵は、着床前後に自然淘汰されています。したがって、チェックワンファストという非常に高感度の妊娠検査薬を毎周期、生理予定日前後に使用すれば、一時的に陽性に出る事は非常に良くある事です。
アメリカの論文 (Fertility and Sterility, 65, 1996, 503-509)によると、不妊でも不育症でもない健康なカップルに排卵日に性交渉を持ってもらい、その後毎日早朝尿を提出してもらい、妊娠反応を検査したところ、何と全妊娠の31%が流産となり、その流産の中の41%は、尿検査で陽性が出ただけの化学流産だったそうです。本当の臨床的な流産は、9.5%でした。化学流産になった場合も、生理の遅れを伴わないものも多かったそうです。要するに、正常な若いカップルでも、毎回生理予定日にチェックワンファストを行えば、化学流産は普通に見られる事になります。また、もしもチェックワンファストで陽性に出た直後に生理になったものを妊娠とか化学流産にカウントするのであれば、若い正常なカップルでさえ流産率は31%もある事になります。
以上の事から、チェックワンファストで陽性が出たからと言って、その後、直ぐに生理になった場合は流産にカウントする事は、問題があります。そんな事をしたら、世の中、習慣流産患者であふれてしまいます。また、不育症治療中の方でも、提示された薬を高温期から飲んでいたのに、化学流産になってしまったので、治療方針を再検討するべきであると言うご意見にも賛同しかねます。
私は、着床障害の治療にも力を入れていますが、染色体異常の受精卵が自然淘汰されずに産まれる様にする事はできませんし、するべきでもありません。
皆さんがチェックワンファストという医学の最先端の診断薬を使用して覗いているのは、神の領域です。安易に覗き、人間の狭い視点でそれを評価しない方が良いかも知れません。
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